ギリシャ危機で思うこと

ギリシャ危機で思うこと

先日ある機関投資家の関係者が、「ギリシヤは一刻も早くデフォルトしてユーロから離脱してほしい」と漏らした。雑談中の何気ない一言だっただけに、かえって真実味を感じた。2009年秋の政権交代をきっかけに顕在化したギリシヤ・ショックだが、当時は早期に収束するだろうとの予想が大半たった。ギリシヤの経済規模はユーロ圏全体の3%にも満たない。ドイツとフランスが大陸欧州のメンツにかけても守り切るだろう。しかし、残念ながらこの希望的観測は外れ、ギリシヤという「尻尾」に振り回されるユーロ圈とグローバル経済という構図は終わりが見えない様相を呈している。

 

危機が表面化したにもかかわらず、指導者層が「過去の経験則」と「平時の現状認識」にとらわれ、問題を楼小化してとらえてしまうパターンは、ここ数年、世界各地で何度も繰り返されている。200ア年のサブプライム・ショックのときは、当初事態を軽視し、初動か遅れたとしてバーナンキFRB(米連邦準備理事会)議長が批判された。2008年のリーマン・ショック時には、与謝野馨経済財政担当相(当時)が「ハチが刺した程度。日本の金融機関が傷むことは絶対にない」と言い切り、まもなく釈明に追われる羽目になった。

 

危機管理のポイントは初動態勢にあり、問題が表面化したときは、政治のりーダーシップのもと、ヒト・モノ・カネを迅速かつ大量に投入することが求められる。金融危機はギリシヤ・ショックが最後ではない。「予備軍」は世界各地に散見される。米国の雇用および所得の格差問題、中国やインドなど新興国のインフレ、日本国債の価格急落-。これらの"時限爆弾"も、着火時点では小さな火花かもしれないが、やがて世界を揺るがすほどの大爆発に変わる可能性を秘めている。

 

「危機」も「リスク」も細部に宿る。小さなアラートのうちに芽を摘む知恵と行動力を、我々FX投資家は一刻も早く身につけなければならない。

日本株ストラテジストのたそがれ

証券業界で「ストラテジスト」とは、投資戦略全般について分析して、投資戦略を提案する専門家だ。株式とか債券、為替など、マーケット別に担当が分かれていることが多い。外資系証券の日本法人も含め日本にある証券会社の場合は、日本株のストラテジストが、その証券会社を代表するストラテジストであることが多い。証券会社の調査系の仕事としては、経済を分析するエコノミストや投資家に人気がある業界を担当するアナリストとともに会社を代表する花形のポジションの一つだった。

 

今、文末を過去形で書いたが、現在でも重要なポジションであるには違いないのに、かつてほど注目されていないように思うのは、筆者の思い過ごしだろうか。有名ストラテジストの人気ランキングは続いていて、業界内で激しい争いはあるのだが、申し訳ないが集団全体の印象が薄れてきた。

 

理由の一つに、大物ストラテジストたちが年をとってきたことがあるかもしれない。エコノミストにも同じ傾向があるが、「同じことを言うなら知名度の高い人が言うほうが価値がある」職業なので、世代交代が起こりにくい構造だ。ある意味では、同期から一人出ることが、普通の官庁の事務次官よりもストラテジストのほうが成りがたいのかもしれない。

 

ただ、顧客の属性(プローアマ、資金の性質、地域、年齢層など)によっては、サービスに当たるストラテジストのタイプを使い分けるといいのかもしれない。投資の世界では、過ごした時代が違うと物事の感じ方が違うので、若い顧客には若いストラテジストを当てるといったことは試す価値がある。

 

本来は、マーケティング的な調査を行ない、それこそ戦略を考えるべきなのだろうが、証券はこうした努力が意外に遅れた業界だ。もう一つ考えられるのは、日も本株式という投資対象の「日本における」地盤沈下だ。ある大手証券のストラテジストに聞いた話だが、支店で顧客やセールスマンに話をする場合、質問の半分が海外資産に関連する話題だという。いまや、日本株だけを語っていてもウケないのだそうだ。

 

日本のストラテジストの基本的な文体と文章の構成は、1980年代の後半に野村設券の「ポートフォリオーマンスリー」と称していた資料に同社のストラテジストが書いていた文章で確立されたと思う。まず、日本と世界の経済状況と政策に目を配り、さらに債券・為替・株式の各市場の状況分析を加味して、株価全体(プロ向けはTOPIXで、アマ向けは日経平均で)の強弱を論じ、さらに重点投資すべき業種などの投資アイディアを述べるというような構成であり、諸々の要素を日本株の投資戦略に集約して語る。

 

日本株を運用するファンドマネジャーはこれでもそこそこにおもしろいはずだが、一般投資家は、中国の経済と株価が気になるかもしれないし、外国の金利や為替レートに関連する戦略(分析だけでなく「戦略」)を聞きたいかもしれない。日本株の取引手数料が下がったせいもあって、証券会社のセールスマンも、もっと大きな手数料が稼げる投資信託や外国債券について、顧客に語ることができるストーリーを仕入れたいに違いない。

 

ストラテジストの側でも、こうした顧客のニーズに合わせて、新しい情報、分析、アイディア、そして話し方も含めた意味での「新しい文体」を開発しなければならないのだろう。これは、進歩した投資家に、ストラテジストが遅れてついてくるということだ。

 

参考サイト:http://www.fx-ranking.club/